フランス人が東京で考えた。-働き方・休み方-

フランス語会話学校エコールサンパのスタッフがライフスタイル、日本での生活を通して考えたことを、サンパに(sympa: 好意的に)本音で語ります。

おもてなしについて思うこと

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家の近所にお気に入りのビストロがありました。ベースはフランス料理でどれも美味。ワインはイタリア、スペイン、フランスの少量生産の良いものが揃っています。オーナー夫婦のことはよく知りませんでしたが、彼らと日本語で話し、日本語で料理を注文し、私の顔を覚えてくれたようでした。良いお店を見つけた、と思っていました。

 

3度目にそこへ行った日のことです。その日は注文前に英語のメニューが差し出されました。オーナー言わく「この区内のお店は、外国人客用に英語メニューを置く決まりになったんです。」

2020年のオリンピックに向けたおもてなし策の一環であることは、私にも分かりました。しかし私はこの対応に違和感を覚えました。私と日本語で話したことは、彼も覚えていたはずです。にもかかわらず英語メニューを差し出されたことは、屈辱ですらありました。残念な気持ちの方が強かったかもしれません。様々な人々と日本語でコミュニケーションしながら、私は長年日本で生きてきたのですから。

 

自分がもし観光客だったとしても、外国人を見て即英語メニューを差し出す対応に、多少がっかりしたと思います。旅の一番の楽しみは、土地の人々とのふれあい。旅を振り返って真っ先に思い起こすのも、やはりこれです。

 

ときどき日本に遊びに来る友人がいます。滞在中に2回、必ず一緒にノリさんの店へ行きます。とても感じのよい居酒屋です。旅の始まりと締めくくりは絶対にこの店。これは二人にとって儀式のようなものです。初めてこの店に入ったのは、彼が最初に東京に来た時のこと。寛いだ店の雰囲気に惹かれて何となく入りました。私達はノリさんから素晴らしいもてなしを受けました。彼は常連客を私達に紹介してくれました。私と同世代の、特別お店をひいきにしているお客とも知り合いになりました。彼と私は日本語で話し、友人と彼の話を私が訳し、時々英語も混ざる。そんな状況でしたから、友人は彼の話を半分しか理解できなかったかもしれません。それでも確かなことは、私達3人とも、寛いで満ち足りた気分で楽しいひとときを過ごした、ということです。

 

本物のおもてなし精神について考えるとき、私は真っ先にノリさんを思い浮かべます。その道のプロであるだけでなく、異なる文化的背景を持つ者同士のつなげ方を知っています。私みたいな外国人客の扱いに慣れているせいもあったかもしれません。いずれにせよ、東京に来る外国人観光客にも、他県から東京にやって来る日本人にも、ぜひともこのような体験を味わってもらいたいと思います。

 

最近何かで読みましたが、東京の行政機関がおもてなし策の一環として、英語でコミュニケーションするロボットを設置するそうです。おそらくどこかで既に始まっているかもしれません。親切だとは思いますが、個人的にはこうした策にあまり興味が持てません。道が分からなければロボットに尋ねるよりも、私はその土地の人と話したい。その土地の言葉が分からなくても、それは変わりません。英語をマスターしていない人でも、最先端の技術を導入する組織がなくても、東京住民は自然なおもてなしセンスを発揮できる。私はそう思います。

(Laurent F エコールサンパ本部)